就業規則の不利益変更に関する基本的な考え方

「労働者との個別の合意」に基づく労働契約の内容変更/労働条件を不利益変更する方法①

労働契約や就業規則の内容などを変更する場合には、それが労働条件の不利益変更に当たるのか、当たらないのか、当たったとしてその合理性をどのように整理して纏めればいいのかが大変分かりづらい面があります。特に就業規則の変更では、統一的に労働条件を引き下げる場合の有効性、合理性が問題となります。

労働条件を不利益に変更する方法

労働条件を不利益に変更する方法として、労働者との個別の合意、労働協約の締結、または就業規則の変更の3つの方法が考えられます。就業規則の変更では、労働条件の不利益変更法理が適用され、合理性判断の対象となります。

労働者との個別の合意に基づく労働条件の変更

労働条件を不利益変更する場合は、労働契約の内容を変更する者である限り、契約の一般原則により、労働者との個別の合意によって行うことが可能です。

労働契約法8条においても、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」と定められています。

労働契約法8条の「合意」は、「労働者及び使用者」が「合意」するという要件を満たした場合に、「労働契約の内容である労働条件」が「変更」されるという法的効果が生じることが規定されています。労働契約の変更の要件として、変更内容について書面交付することまでは求められていません。

とはいえ、労働条件を不利益に変更する場合の労働者からの合意を得ることは慎重に行わなければなりません。問題となるのは、労働者の同意(承諾)の認定なのです。

労働者の同意の認定での留意点

不利益変更に対する労働者の同意の認定については、山梨県民信用組合事件(最高裁二小 平28.2.29判決)で最高裁は、「当該変更に対する労働者の同意の有無についての判断は慎重にされるべきである。そうすると、就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく、当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべきものと解するのが相当である。」と判示しています。